下呂温泉の神社めぐりは徒歩圏3社から|カエル・さるぼぼ・白鷺伝説をたどる御利益ガイド

下呂温泉の神社めぐりは徒歩圏3社から|カエル・さるぼぼ・白鷺伝説をたどる御利益ガイドのアイキャッチ画像

下呂温泉に泊まる予定を立てていて、「温泉街に神社ってあるの?」「御朱印はもらえる?」と検索してこのページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。日本三名泉として名高い下呂温泉ですが、湯以外の見どころとなると情報がまとまっておらず、旅館のパンフレットにも神社仏閣の欄はほとんどありません。

結論から書きます。下呂温泉には、湯上がりの浴衣と下駄のまま歩いて回れる神社が温泉街の中に複数あり、そこから少し足をのばせば国の重要文化財に指定された社殿や、樹齢1500年ともいわれる御神木まで見に行けます。カエルをご神体にした風変わりな神社から、出羽三山の分霊を祀る湯の神様、白鷺伝説そのものを伝える寺まで、性格がまったく違う7つのスポットが半径10キロほどの中に収まっているのが下呂の面白さです。

この記事では、温泉街の徒歩圏にある3社、駅から歩ける氏神と開湯の寺、そして車で足をのばす萩原エリアの2つの名刹を、拝観料・所要時間・駐車場まで含めて案内します。祭りの日程や毎月9日の限定行事など、日にちを合わせると価値が跳ね上がるポイントも一緒に整理しました。

📌 この記事でわかること

・浴衣と下駄のまま回れる温泉街の3社と、それぞれの性格の違い
・開湯伝説の薬師如来を祀る温泉寺の見どころと、毎月9日の限定行事
・国の重要文化財と天然記念物がそろう萩原エリア2社への行き方と拝観料
・2月と10月にしか見られない祭礼の日程と、見学で失敗しないコツ

目次

下呂温泉の神社めぐりは、まず7つを地図に置くところから始まる

下呂温泉の神社めぐりは、まず7つを地図に置くところから始まるの解説画像

下呂の神社仏閣は「温泉街の中」「駅から歩ける範囲」「車で足をのばす萩原」の三層に分かれています。この距離感を先に頭に入れておくと、限られた滞在時間の中で無理のない組み立てができます。逆に何も考えずに歩き出すと、温泉街の3社だけ見て「下呂の神社って小さいな」で終わってしまいます。

浴衣と下駄でも回れる、温泉街のど真ん中の3社

温泉街の中心部だけで、加恵瑠神社・さるぼぼ七福神社・下呂温泉神社の3社が参拝できます。いずれも飛騨川に架かる白鷺橋の周辺に集まっていて、3社を続けて回っても30分ほど。宿にチェックインしたあと、夕食までの空き時間にちょうど収まる分量です。

この3社に共通するのは、いわゆる古社ではないという点です。加恵瑠神社は平成22年(2010年)7月の創建、下呂温泉神社は平成元年(1989年)の創建で、いずれも温泉街を訪れる人のために新しく建てられた神社です。歴史の重みを求めて行くと肩透かしを食いますが、「湯めぐりの合間の寄り道」と割り切れば、これほど条件のいい神社はありません。

夜の散策と組み合わせるのが向いています。3社とも参拝自由で門を閉ざさないため、夕食後にライトアップされた温泉街を歩きながら立ち寄れます。ただし夜間は足元が暗く、下駄では石畳で滑ることがあります。湯上がりに出かけるなら、宿のサンダルではなく履き慣れた靴に履き替えるのが安全です。

徒歩圏の外側に、氏神と開湯の寺がもう2つある

温泉街の3社の外側にあるのが、下呂の氏神である森水無八幡神社と、下呂温泉の開湯伝説そのものを伝える温泉寺です。森水無八幡神社はJR高山本線 下呂駅から徒歩約10分(約0.8km)、温泉寺はJR高山本線 下呂駅から徒歩約15分。どちらも駅を起点にすれば無理なく歩ける距離です。

この2つは、温泉街の3社とは重みがまったく違います。森水無八幡神社は昭和56年(1981年)に国指定重要無形民俗文化財となった「下呂の田の神祭り」の舞台であり、温泉寺は寛文11年(1671年)創建で、下呂温泉の歴史を記した「湯文」を所蔵する寺です。下呂の湯がなぜここに湧いているのかを知りたいなら、この2つは外せません。

注意したいのは高低差です。温泉寺は本堂まで173段の石段を上る必要があり、森水無八幡神社も参道に階段があります。ベビーカーや車椅子での参拝、膝に不安のある方の参拝は、下から見上げるだけになる可能性を織り込んでおいてください。

車で足をのばす萩原エリアに、国の重要文化財が眠っている

下呂市の中でも萩原町エリアには、久津八幡宮と禅昌寺という格の違う2つの名刹があります。久津八幡宮は本殿・拝殿とも国の重要文化財、禅昌寺は岐阜県指定名勝の庭園「萬歳洞」と国の天然記念物の大杉を持つ寺です。温泉街からは車で20分ほど離れますが、下呂温泉の神社めぐりを「観光」にするか「文化財めぐり」にするかの分かれ目がここです。

公共交通でも行けます。久津八幡宮はJR飛騨萩原駅から徒歩25分、禅昌寺はJR高山本線 禅昌寺駅から徒歩5分。高山本線は本数が限られるため、時刻表を確認せずに向かうと帰りの列車を1時間以上待つことになります。レンタカーか宿の送迎を使えるなら、そちらのほうが確実です。

この2社は下呂温泉に連泊する方、あるいは高山方面へ抜ける途中に立ち寄る方に向いています。1泊2日で温泉と食事が主目的なら、無理に組み込まず温泉街の5スポットに絞ったほうが満足度は高くなります。

【ぎふ旅手帖調べ】7スポットの拝観料・所要時間・駐車場を並べて比較

公式サイトと下呂市の公開情報から、参拝にかかるお金と時間、車で行く場合の駐車場を一覧にしました。予定を組むときの下敷きに使ってください。

スポット 拝観料 所要目安 駐車場 最寄駅から
加恵瑠神社 なし 約5分 記載なし 下呂駅 徒歩5分
さるぼぼ七福神社 なし 約10分 記載なし 白鷺橋 徒歩1分
下呂温泉神社 なし 約5分 記載なし 旅館会館1階
温泉寺 無料 約30分 20台・無料 下呂駅 徒歩約15分
森水無八幡神社 なし 約20分 記載なし 下呂駅 徒歩約10分
久津八幡宮 なし 約30分 80台・無料 飛騨萩原駅 徒歩25分
禅昌寺 大人500円 約40分 50台・無料 禅昌寺駅 徒歩5分

表にしてみると、7スポットのうち拝観料がかかるのは禅昌寺だけだとわかります。所要時間の合計はおよそ2時間20分。移動を含めても、半日あれば全部回れる計算です。ただし禅昌寺は不定休で、正月や寺の行事の日は拝観できない場合があるため、ここだけは事前確認をおすすめします。

カエルと巨大さるぼぼ。白鷺橋をはさむ2社は体験型

下呂温泉の神社と検索したとき、いちばん多く写真が出てくるのが加恵瑠神社です。白鷺橋のたもとに鎮座するこの神社は、カエルをご神体として祀るという日本でも数少ない形をとっています。そして橋を渡ったすぐ先には、飛騨の名産さるぼぼが七福神の姿で並ぶさるぼぼ七福神社。この2社はどちらも「手を合わせる」より「体験する」神社です。

加恵瑠大明神は、賽銭を入れるとお告げをくれる

加恵瑠神社の最大の特徴は、加恵瑠大明神の石像に賽銭を奉納すると、お告げが聞こえてくることです。賽銭箱の下に仕込まれたスピーカーから声が流れ、最後は「ケロケロ」というフレーズで締めくくられます。参拝というより体験に近く、子ども連れだと確実に喜ばれます。

おみくじは1枚100円、絵馬は1枚300円が目安です(1つの情報源による価格のため、実際の初穂料は現地の表示をご確認ください)。絵馬にはカエルが描かれていて、境内には奉納された絵馬がびっしり掛かっています。旅の記念に一枚書いていく人が多い神社です。

向いているのは、家族旅行やカップル旅行で「写真映えする立ち寄り先」を探している方です。逆に、静かに手を合わせる場所を求めている方には賑やかすぎます。日中は温泉街を歩く観光客が絶えず、石像の前に列ができることも珍しくありません。朝食前の散歩がてら訪れると、静けさの中でゆっくり参拝できます。

「無事帰る」「若返る」——語呂合わせを本気でやり切った神社

そもそもなぜカエルなのか。下呂(げろ)という地名と、カエルの鳴き声「ゲロゲロ」の語呂合わせが出発点です。そこに「無事帰る」「若返る」といった縁起のよい言葉が重ねられ、旅の安全と若返りを願う神社として2010年7月に生まれました。

下呂市も公式サイトの神社仏閣ページで、加恵瑠神社を「下呂温泉街の新しい観光名所」として紹介しています。地元が観光資源として明確に位置づけている神社であり、由緒書きを読んで格式を確かめるタイプの参拝先ではない、と理解しておくと肩透かしを食いません。参拝そのものは5分もあれば終わるため、単独の目的地にせず散策の途中に挟むのが正解です。

注意点として、加恵瑠神社には専用の無料駐車場の案内が公式に出ていません。車で温泉街に入る場合は、周辺の駐車場に停めて歩くことになります。温泉街の道は狭く一方通行も多いため、宿に車を置いて徒歩で回るのが結局いちばん早い方法です。

💡 ぎふ旅メモ

加恵瑠神社の名を検索すると、合掌村にあった「かえる神社」が閉鎖されたという情報が混ざって出てきます。この2つは別物で、温泉街の加恵瑠神社は現在も下呂市の公式ページに掲載されています。古い記事を見て「もうない」と諦める必要はありません。

📍 加恵瑠神社
住所 〒509-2207 岐阜県下呂市湯之島543-2
アクセス JR高山本線 下呂駅より徒歩5分
公式サイト 公式サイト

七福神の衣装をまとったさるぼぼが、実物大以上のサイズで並ぶ

さるぼぼとは、飛騨地方で古くからつくられてきた猿の赤ちゃんを模した人形で、縁結び・夫婦円満・安産祈願・子どもの成長を願うお守りとして親しまれてきました。その巨大版が七福神の装束をまとって並んでいるのが、白鷺橋から徒歩1分のしらさぎ横丁にあるさるぼぼ七福神社です。色ごとにご利益が違い、カラフルな絵馬が周囲を埋め尽くしています。

祀られているご利益は、縁結び・恋愛成就、金運、商売繁盛、健康長寿、病気平癒、安産祈願・子宝、家内安全、勝負運の8種類。願いごとの種類が多いぶん、一緒に旅する人それぞれが別の願いを掛けられます。参拝の所要時間は約10分が目安です。なお御朱印の授与はないため、御朱印帳を持って下呂を訪れる方は温泉寺や禅昌寺を目的地に据えてください。

写真を撮る目的で訪れる方が多い場所ですが、色の鮮やかさが際立つのは晴れた日の午前中です。午後は建物の影が落ちて、さるぼぼの色がくすんで写ります。SNS用の一枚をねらうなら、朝の温泉街散歩に組み込んでください。

鳥居をくぐると宝船の足湯。9:00〜20:00で無料

この神社が単なるフォトスポットで終わらないのは、境内に「さるぼぼ黄金の足湯」があるからです。下呂温泉観光協会の公式情報によれば、利用時間は9:00〜20:00で料金は無料。さるぼぼの七福神と金をモチーフにした造りで、記念撮影もできます。

参拝したあとそのまま足湯に浸かれる構造は、湯の街ならではです。温泉街を歩き回って足が疲れたタイミングで立ち寄ると、そこから先の歩きがずいぶん楽になります。夕方以降は宿の浴衣姿の宿泊客が集まり、20時の終了間際まで賑わいます。周囲の店舗が閉まる時間帯は横丁全体が暗くなるため、夜に訪れるなら足湯が使える20時までに切り上げるのが現実的です。

下呂温泉には無料で入れる足湯が温泉街のあちこちに点在していて、湯めぐりの組み立て方でその日の満足度が変わります。共同浴場や他の足湯との関係は、こちらの記事に詳しくまとめています。

あわせて読みたい
下呂温泉は岐阜のどこにある?|共同浴場3湯と足湯9か所を470円から巡る完全ガイド
飛騨川沿いに湯けむりが立ちのぼる街並みを前にして、「結局どこの湯に入ればいいのか分からない」と立ち止まってしまう人は多いはずです。旅館は100軒近く、共同浴場が…
⚠️ 知っておきたい注意点

よくある失敗が、タオルを持たずに足湯に入ってしまうことです。下呂温泉の無料足湯にはタオルの用意がなく、濡れた足のまま靴下を履くと冷えて歩くのがつらくなります。宿を出るときにフェイスタオルを1枚バッグに入れる、それだけで防げます。神社めぐりと足湯をセットにするなら必携です。

📍 さるぼぼ七福神社
住所 〒509-2207 岐阜県下呂市湯之島780
公式サイト 公式サイト

湯殿山の分霊を祀る社と、10月8日だけ動く行列

湯殿山の分霊を祀る社と、10月8日だけ動く行列の解説画像

温泉街の3社目が下呂温泉神社です。名前のとおり下呂の湯そのものを祀る神社で、他の2社とは性格が違います。参拝者の目当ても、写真ではなく「湯への感謝」に寄っています。

旅館会館の1階に鳥居がある、という違和感

下呂温泉神社は、下呂温泉旅館会館の1階に鎮座しています。飛騨川を渡ってすぐ、コンビニの向かいのビルの1階という立地で、初めて訪れると鳥居の背後に建物の壁があることに面食らいます。境内は和洋が混じった意匠になっていて、鳥居には創建年が刻まれています。

この立地には理由があります。温泉旅館の組合が、湯の恵みに感謝するための社を、旅館関係者が集まる会館に建てたからです。山の上の奥まった場所ではなく、温泉街の商いの中心に置かれたことで、宿泊客が自然に立ち寄れる神社になりました。

参拝そのものは5分で終わります。夜に訪れると照明が灯り、昼間とは違う雰囲気になります。ただし建物の1階という性質上、周囲は普通に人や車が行き交う道路です。静謐さを期待すると落差を感じるので、「温泉街の守り神に挨拶をする」くらいの気持ちで訪ねるのがちょうどいい場所です。

出羽三山から迎えた湯の神。創建は平成元年

📜 歴史メモ

下呂温泉神社は平成元年(1989年)、山形県の出羽三山の一角である湯殿山神社から御分霊を受けて創建されました。湯殿山は古くから湯の湧く霊場として信仰を集めてきた山であり、その神を日本三名泉のひとつ下呂に迎えたことになります。創建からまだ40年ほどの新しい神社ですが、祀られている神格そのものは東北の霊山にさかのぼります。

この由緒を知っているかどうかで、参拝の意味がまるで変わります。建物の1階にある小さな社に見えても、そこにあるのは湯の霊場の分霊です。下呂の湯に浸かったあと、あるいは浸かる前に、この神社に手を合わせてから宿に戻るという順番にすると、旅の輪郭がはっきりします。

御朱印の授与はありません。御朱印を集めている方は、この点だけ押さえておいてください。下呂温泉で御朱印をいただけるのは温泉寺や禅昌寺など、後半で紹介する寺院が中心になります。

例祭は毎年10月8日。下呂駅から神社まで行列が歩く

下呂温泉神社が1年でいちばん動くのが、毎年10月8日の例祭です。下呂市の公開情報によれば、参進行列は下呂駅から森水無八幡神社を経由して下呂温泉神社まで歩き、その後に例祭が営まれます。観光関係者が裃姿で練り歩く光景は、この日だけのものです。

例祭のあとは白鷺橋でふるまい酒がふるまわれ、芸妓連の奉納舞と花笠踊りが披露され、最後に紅白だんごとお菓子をまく「せんごまき」で締めくくられます。温泉街の路上が丸ごと祭りの場になるため、この日に宿を取れば、湯と祭りを一度に味わえます。

注意点は、年によって内容が変わることです。過去には神事のみに縮小された年もありました。10月8日に合わせて旅程を組むなら、直前に下呂温泉観光協会の下呂温泉神社例祭のページで開催形態を確かめてから出発してください。

173段の石段の上に、開湯伝説の薬師如来が待っている

下呂の神社仏閣めぐりで核になるのが温泉寺です。臨済宗妙心寺派の禅寺で、山号は醫王霊山、本尊は薬師如来。下呂温泉がなぜここに湧いているのかという問いの答えが、この寺に残されています。

白鷺が教えた源泉。文永2年に何が起きたか

温泉寺に伝わるのが、下呂温泉の白鷺伝説です。文永2年(1265年)、それまで湧いていた温泉が突然止まりました。困り果てた村人が飛騨川を見ると、毎日そこへ飛来する一羽の白鷺がいる。追っていくと、白鷺がとまっていた松の根元から新しい湯が湧き出していました。

さらにその場所で薬師如来像が見つかったことから、村人は白鷺が薬師如来の化身だったと信じました。この薬師如来を祀るために建てられたのが温泉寺です。創建は寛文11年(1671年)、北海道開拓で知られる初代飛騨屋久兵衛の父が、禅昌寺八世の剛山和尚を中興開山に迎えて再興したと伝わります。

境内には温泉の歴史を記した「湯文」や、江戸時代の絵馬が多数保存されています。本堂近くの薬師如来像からは湯が流れ出しており、その湯を体に塗ると癒やしの力があるといわれています。伝説を読んでから境内に立つと、石段を上る意味が変わってきます。

173段を上りきると、温泉街が足元に広がる

温泉寺の境内は、下呂富士と呼ばれる中根山の中腹にあります。本堂へは173段の石段を上る必要があり、これが体力的な関門です。上りきった先の境内からは、飛騨川沿いに広がる温泉街を見下ろせます。宿の窓から見る景色とはまったく違う角度から、下呂の地形がわかります。

拝観料は無料、駐車場は20台分が無料で用意されています。JR高山本線 下呂駅から徒歩約15分。車で向かう場合も駐車場から石段は避けられないため、歩きやすい靴で訪れてください。浴衣に下駄で173段を上るのは、下りで転倒する危険があります。

Q. 173段の石段を上らずに温泉寺を楽しむ方法はありますか?
A. 石段の下から見上げる構図そのものが温泉寺の名物写真です。特に11月の紅葉ライトアップの時期は、石段全体が色づいた木々に包まれ、下から撮るほうが絵になります。境内まで上がらなくても十分に楽しめる寺なので、膝に不安がある方は無理をしないでください。

毎月9日は「円空の日」。お抱き体験と抹茶が待つ

温泉寺で日にちを合わせる価値があるのが、毎月9日の「円空の日」です。下呂市の公開情報によれば、この日はお抱き体験(有料)と抹茶のサービスがあります。円空仏を実際に抱かせてもらえる機会は全国的にも限られており、仏像好きなら旅程を9日に寄せる意味があります。

円空は江戸時代前期の遊行僧で、生涯に12万体の仏像を彫ったと伝わる人物です。飛騨には円空仏が数多く残されており、下呂もそのひとつ。ガラス越しに眺めるのではなく、腕の中で木の重みと鑿の跡を感じられるのがこの体験の価値です。

体験内容や実施の有無は変わることがあるため、9日に訪れる予定なら事前に寺へ確認してください。温泉寺の公式サイトには行事のお知らせが随時掲載されています。

11月の紅葉ライトアップと、15人限定の「もみじ足湯」

温泉寺が1年でもっとも賑わうのが、毎年11月に開催される温泉寺周辺の紅葉ライトアップです。173段の石段と境内の紅葉が照らし出され、夜空に浮かび上がります。期間中は普段公開されていない醫王閣が開かれる年もあります。

この期間の名物が、15人まで入れる「もみじ足湯」です。ライトアップされた紅葉を見上げながら足を湯に浸けるという、温泉地の寺ならではの趣向。定員が限られているため、混雑する時間帯は待ち時間が発生します。

開催期間は年によって前後します。11月に下呂へ行く予定があるなら、宿を押さえる前に公式サイトで日程を確認し、ライトアップ期間に重ねるのが賢い組み立てです。ただしこの時期は宿の予約が埋まりやすく、直前だと選択肢が狭まります。

📍 温泉寺
住所 〒509-2207 岐阜県下呂市湯之島680
電話番号 0576-25-2465
アクセス JR高山本線 下呂駅から徒歩約15分
駐車場 あり(20台・無料)
公式サイト 公式サイト

2月の2日間だけ動く神社。森水無八幡神社と田の神祭り

下呂の神社で、地元にとって最も重い意味を持つのが森水無八幡神社です。下呂の氏神であり、国指定重要無形民俗文化財「下呂の田の神祭り」の舞台でもあります。観光ガイドでの扱いは小さいのですが、下呂の信仰の中心はここです。

下呂の氏神は、駅から徒歩約10分の場所にある

森水無八幡神社はJR高山本線 下呂駅から徒歩約10分(約0.8km)。温泉街からも歩ける距離にありながら、参拝者の姿はまばらで、静かに手を合わせられる神社です。加恵瑠神社やさるぼぼ七福神社の賑わいとは対照的な空気が流れています。

祭りの日以外に訪れるなら、静けさを求める方に向いています。杉に囲まれた参道を歩き、拝殿の前で手を合わせるという、神社参拝の基本形がここにはあります。温泉街の3社で「観光地すぎる」と感じた方こそ、足をのばす価値があります。

公式に駐車場の案内は出ていません。車で行くなら温泉街の駐車場に停めて歩くか、宿から歩くのが現実的です。参道には階段があるため、足元が濡れている日は手すりを使ってください。

2月13日は19時から、14日は13時30分から

森水無八幡神社が1年で最も熱を帯びるのが、2月の田の神祭り(通称・花笠まつり)です。下呂市の公開情報によれば、祭りは2月7日の「神主(テテ)頼みの儀」に始まり、2月13日が試楽祭、2月14日が本楽祭という日程で進みます。

2月13日の試楽祭は森水無八幡神社で19時から。凍てつく寒さの中、田口家・神主・踊り子たちが禊を行い、境内で古式の舞を披露します。2月14日の本楽祭は下呂温泉合掌村で正午から始まり、池での禊としらさぎ座の獅子舞を経て、行列が神社へ向かいます。神社に到着するのが13時30分です。

クライマックスは、神社境内で花笠踊りが披露されたあと。縁起物の「花笠(寄進笠)」「赤白団子」「小竹箸(コイ箸)」が観衆に向かって一斉に投げられます。見学は無料です。稲の豊作を前もって祝う中世からの田遊び芸能が起源で、昭和56年(1981年)に国指定重要無形民俗文化財となりました。

この祭りの名は、下呂温泉街の足湯の名前にもなっています。祭りの背景をもう少し知りたい方は、こちらもあわせてどうぞ。

あわせて読みたい
田の神の足湯は下呂駅から徒歩8分の24時間無料|500年続く花笠まつりが名の由来
下呂温泉に行くなら足湯めぐりが定番。でも「どの足湯が無料で、いつでも入れるの?」「温泉街の中心はにぎやかすぎて、ゆっくり浸かれる場所はない?」と迷っていませんか…

花笠と団子が飛ぶ本番。ただし2月の飛騨は本気で寒い

⚠️ 知っておきたい注意点

見学でありがちな失敗が、2月14日の昼に合掌村へ行けば全部見られると思い込むことです。本楽祭は正午に合掌村で始まり、行列が移動して13時30分に森水無八幡神社へ着きます。花笠踊りと縁起物投げは神社側で行われるため、合掌村だけ見て帰ると本番を丸ごと逃します。原因は「1カ所で完結する祭り」という思い込み。対策は、合掌村で禊と獅子舞を見たら行列と一緒に神社まで歩くことです。

もうひとつの関門が寒さです。2月中旬の飛騨は日中でも氷点下になる日があり、13日の試楽祭は19時開始の夜行事。境内は屋根がなく、立ち止まって見学する時間が1時間を超えます。厚手のダウン、手袋、耳まで覆う帽子、そしてカイロは必須装備です。

足元も重要です。境内は土や砂利で、雪や霜で濡れていることがあります。滑りにくい靴底で、防水性のあるものを選んでください。祭りを見たあとに温泉で温まるという流れを組めるのが、下呂で祭りを見る最大の強みです。

📍 森水無八幡神社
住所 岐阜県下呂市森1321
アクセス JR高山本線 下呂駅から徒歩約10分(約0.8km)
公式サイト 公式サイト

足をのばす価値がある萩原の2社。国重文と樹齢1500年の杉

ここまでは温泉街を中心に紹介してきましたが、下呂市の文化財としての本丸は萩原町にあります。久津八幡宮と禅昌寺、この2つは下呂温泉から車で20分ほど。時間が取れるなら、旅の質が一段上がります。

久津八幡宮は本殿・拝殿ともに国の重要文化財

久津八幡宮は、創建が1600年ほど前と伝わる古社です。主祭神は応神天皇。本殿は応永19年(1412年)の再建、拝殿は天正9年(1581年)の建立で、いずれも国の重要文化財に指定されています。拝殿は桁行五間・梁間四間、一重の入母屋造でこけら葺という中世の建築様式をそのまま伝えています。

もうひとつの見どころが、境内の夫婦スギです。樹齢1500年ともいわれる巨木で、国の天然記念物に指定されています。社殿の古さと御神木の年輪が重なって、温泉街の新しい神社とはまったく別の時間が流れています。

駐車場は80台分が無料。大型バスも入れる規模で、車で訪れる場合の心配はありません。JR飛騨萩原駅から徒歩25分でも行けますが、高山本線は本数が少ないため、車のほうが確実です。文化財としての詳細は文化庁の文化遺産オンラインで確認できます。

📍 久津八幡宮
住所 岐阜県下呂市萩原町上呂2345-1
電話番号 0576-52-1240
アクセス JR飛騨萩原駅から徒歩25分
駐車場 あり(80台・無料)
公式サイト 公式サイト

禅昌寺は拝観料500円。雪舟の達磨と県指定名勝の庭園

禅昌寺は平安時代の創設と伝わる臨済宗妙心寺派の禅寺です。拝観料は大人500円、中学生以下は無料、30名以上の団体は1人450円。拝観時間は5月〜9月が9:00〜16:30、10月〜4月が9:00〜16:00で、定休日は不定休となっています。

見どころは3つ。ひとつめが庭園「萬歳洞」で、岐阜県の指定名勝です。ふたつめが雪舟筆と伝わる大達磨像。そして3つめが、国の天然記念物に指定されている大杉です。樹齢は約1200〜1300年、幹周9.6メートル、高さ40メートルという規模で、境内に入った瞬間に目を奪われます。

禅昌寺はJR高山本線 禅昌寺駅から徒歩5分と、駅名がそのまま寺名という立地です。駐車場は50台分が無料で、大型バスも停められます。ただし正月や寺の行事の日は拝観できない場合があるため、訪問前に電話で確認しておくと空振りを防げます。

📍 禅昌寺
住所 岐阜県下呂市萩原町中呂1089
電話番号 0576-52-1353
営業時間 5月〜9月 9:00〜16:30/10月〜4月 9:00〜16:00
定休日 不定休(正月や寺の行事の日は拝観できない場合あり)
アクセス JR高山本線 禅昌寺駅から徒歩5分
駐車場 あり(50台・無料、大型バス可)
公式サイト 公式サイト

七福神めぐりを軸にすると、寄り道の順番が決まる

下呂には「下呂温泉周遊七福神めぐり」という巡礼コースがあります。下呂温泉観光協会が「開運招福 3時間のこころの巡礼」として案内しているもので、札所は龍泉寺(毘沙門天)・大覚寺(恵比寿天)・禅昌寺(布袋尊)・温泉寺(寿老人)・泰心寺(弁財天)・慈雲院(大黒天)・萬福寺(福禄寿)の7カ寺です。

この記事で紹介した温泉寺が寿老人、禅昌寺が布袋尊の札所にあたります。各札所で七福神の御朱印を授与しており、御朱印帳を持って回る方には明確な軸になります。問い合わせ先は温泉寺です。

7カ寺のうち温泉街から歩けるのは限られており、離れた札所は車かタクシーが前提になります。1日ですべてを回るのは時間的に厳しいので、連泊するか、温泉寺と禅昌寺の2カ寺だけを押さえるという割り切り方が現実的です。詳細は下呂温泉観光協会の公式案内で確認できます。

下呂温泉の神社めぐりで失敗しない、半日の歩き方

ここまでの7スポットを、実際の旅程にどう落とし込むか。滞在時間と交通手段の組み合わせで、正解が変わります。

午前は萩原、午後は温泉街——が破綻しにくい順番

車がある場合、午前中に萩原の久津八幡宮と禅昌寺を回り、午後から温泉街に戻るという順番が破綻しにくい組み立てです。理由は単純で、禅昌寺の拝観が10月〜4月は16:00まで、5月〜9月でも16:30までと早く閉まるからです。温泉街の3社は参拝自由なので、時間の制約がある萩原を先に済ませます。

公共交通の場合は逆になります。高山本線の本数が限られるため、駅の時刻表を先に押さえ、列車の時間に萩原行きを合わせます。温泉街の3社と温泉寺は駅から歩けるので、列車待ちの時間を使って回るのが効率的です。

そもそも下呂までの行き方から迷っている方は、こちらの記事でルートごとの所要時間と料金を比較しています。

あわせて読みたい
下呂温泉への行き方は4ルート|名古屋から特急ひだ1時間45分・車・格安バスまで完全ガイド
「下呂温泉に行きたいけれど、電車と車どちらが正解なの?」「名古屋からどれくらい時間がかかるのか、料金はいくらなのか事前に知っておきたい」——旅の計画を立て始める…

実は、雨の日ほど下呂の神社めぐりは向いている

意外と知られていないのですが、下呂の神社めぐりは雨の日にこそ真価を発揮します。理由は3つあります。第一に、温泉街の3社はいずれも参拝時間が短く、傘をさして歩く距離が知れていること。第二に、雨の日は観光客が減り、加恵瑠神社の石像の前に列ができないこと。

そして第三に、温泉寺の173段の石段と苔むした境内、禅昌寺の庭園「萬歳洞」は、濡れているときのほうが色が深くなることです。晴天の観光地を回るより、雨の禅寺のほうが記憶に残ります。宿の温泉は雨でも入れるのですから、雨予報だからと予定を諦める必要はありません。

ただし条件があります。石段と参道が滑るため、靴底の溝が残った靴を履くこと。そして傘は片手がふさがるので、カメラを使うならレインウェアのほうが動きやすくなります。

タイプ別・下呂の神社めぐりの組み立て方

📝 ポイントまとめ

  • 子ども連れ:加恵瑠神社のお告げ → さるぼぼ七福神社の足湯。飽きさせない体験型の2社で30分
  • カップル・夫婦:さるぼぼ七福神社で縁結び → 温泉寺の展望。夕方の温泉街と組み合わせる
  • 御朱印目当ての一人旅:温泉寺と禅昌寺を軸に七福神めぐり。連泊前提で組む
  • 歴史・建築好き:久津八幡宮の本殿と拝殿 → 禅昌寺の庭園と大杉。半日を萩原に使う
  • 祭り目当て:2月13日・14日の田の神祭り、または10月8日の下呂温泉神社例祭に日程を合わせる

どのタイプでも共通するのは、宿に車を置いて歩くという原則です。温泉街の道は狭く一方通行が多いため、車で移動しようとすると駐車場を探す時間のほうが長くなります。萩原へ行くときだけ車を出す、という使い分けが結局いちばん早く回れます。

参拝前に押さえておきたい持ち物と時間の目安

神社めぐりに持っていくものは多くありません。フェイスタオル1枚(足湯用)、歩きやすい靴、小銭、そして御朱印帳。この4つがあれば足ります。おみくじや絵馬の初穂料は小銭で払う場面が多いので、千円札だけで出かけると困ることがあります。

時間配分は、温泉街の3社で30分、温泉寺で30分、森水無八幡神社で20分、萩原の2社で1時間10分。移動を含めると、全部回って半日というのが現実的な線です。1泊2日なら、到着日の夕方に温泉街の3社、翌日の午前に温泉寺と萩原、という分け方が無理がありません。

最後に、参拝のマナーについて。田の神祭りのような祭礼では、地元の方にとって神事の場です。行列の進路に立ちふさがらない、撮影のためにロープの内側へ入らない、という基本を守れば歓迎されます。観光地化された神社と氏神が同じ町にあるのが下呂の特徴で、その温度差を理解して歩けると、この町の見え方が変わります。

まとめ

🗻 この記事の結論

下呂温泉の神社は、温泉街の3社と開湯の温泉寺、氏神の森水無八幡神社、萩原の名刹2つで構成されます。まずは浴衣で歩ける3社から始めて、時間が取れたら萩原へ足をのばしてください。

✅ 要点チェック
  • 距離で選ぶ:温泉街3社は合計30分で回れる
  • 体力で選ぶ:温泉寺は173段、膝次第で判断
  • 目的で選ぶ:御朱印なら温泉寺と禅昌寺
  • 日付で選ぶ:2月13日・14日と10月8日が祭礼日
  • 費用で選ぶ:拝観料がかかるのは禅昌寺だけ

下呂温泉の神社めぐりは、湯めぐりの合間に差し込める軽さと、文化財を訪ねる重さの両方を持っています。まずは宿を出て白鷺橋まで歩き、加恵瑠神社で賽銭を入れてお告げを聞いてみてください。そこから温泉街の空気が変わって見えてきます。

※拝観時間・拝観料・祭礼の内容は変更されることがあります。お出かけ前に各施設の公式サイトでご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

飛騨高山・白川郷・下呂温泉を中心に、岐阜県の観光スポット・グルメ・温泉情報を発信しています。地元の人に教えてもらった穴場や、季節ごとのおすすめルートなど、旅行計画に役立つリアルな情報をお届けします。

コメント

コメントする

目次